みんなのいけばな

File No.92

今野 鈴子さん 今野 鈴子さん 秋田県/秋田支部

本質を理解することの大切さを いけばなから学んだ日々

いけばなもマラソンも
努力の積み重ねが、やがて花を咲かせる

小原流とは意外な出合いをされた今野さん。いけばなの本質を教えてくれた恩師、そして職場の上司の一言との出合いが、現在の今野さんに影響を与えたと語ります。お仕事をしながら、いけばなだけではなくマラソン大会にも継続して参加されるなど、タフな面も。しなやかな心で前進し続ける今野さんにお話を伺いました。

中川先生の心遣いや 志の高さに敬服

 中川先生とは仙台の教室で一緒にお稽古をさせていただいています。いつも近くの席でいけているので、どちらからともなく自然と声をかけ合ったように思います。中川先生は本当に気さくな方で、いろいろなことを話してくださり、そしていつも生徒さんのことを第一に考えていらっしゃいます。地区別教授者研究会や研修課程などへの参加もそうですが、「学ぶ」ということに対してとても情熱を傾けておられます。こんな言い方をすると失礼かもしれませんが、「私が中川先生の年齢になった時、同じように情熱を持ち続けて頑張れるだろうか」と考えると、やはり頭の下がる思いがいたします。
 ある日のお稽古で、写景盛花様式本位に使う私の日蔭蔓が足りなかったことがありました。その日、中川先生は旦那様と一緒に山に採りに行かれた日蔭蔓を持参されていて、準備不足だった私にそれを惜しげもなく分けてくださいました。新鮮な日蔭蔓はこんなにも美しいのだと感激したと同時に、「花は足でいけなさい」と言われたことを思い出して反省し、自らの足で出生を確かめていけることの大切さを痛感しました。いただいた日蔭蔓は、かなり長い間いろいろなお花に使わせていただき本当に感謝いたしております。
 東日本大震災により1年延期された秋田支部創立55周年記念花展(2012年)の際、「花展の時でもないとなかなか秋田に行けないから」と、遠路はるばるお友達とご一緒にいらしてくださいました。当日、私は会場係だったのでゆっくりご案内できず残念でしたが、現在でも仙台の教室ではご一緒しておりますので、これからもいろいろなお話をさせていただきたいと思います。

すすきの穂で遊ぶ(自宅座敷 2013年11月)

心の礎となった 恩師の教え、上司の言葉

正月花(自宅玄関 2017年1月)

 私がいけばなを始めたきっかけは、人にお話しするにはちょっと恥ずかしい理由です。
 就職して少し経った頃、「会社と自宅の往復だけではつまらないので何かやりたい」と思っていたところ、仕事場の近くに花屋さんがあり、他流のいけばな教室の看板が掛かっていました。当時「池坊」ぐらいしか知らなかったのですが、いけばなを習えば家にまっすぐ帰らなくてもいいし、親も反対しないだろうと思った私は、やる気満々で花屋さんの門を叩きました。そこで他流を習うつもりの私に花屋さんが薦めたのが、なんと『小原流』だったのです!
 花屋さん曰く「うちには小原流の良い先生がおられて、月に一度研究会で勉強もされているので、その先生をお薦めする」とのこと。素人の私は、「先生になっても勉強するなんてすごいな」と思いました。その場で、ちょうど出稽古にいらしていた村田嶺泉先生をご紹介いただき、歌の文句ではありませんが、時の流れに身をまかせ(笑)、小原流入門となりました。

 お稽古で一番苦労したのは、いける以前に膝を折ることでした。今ではテーブルにイスのお稽古場も多いと思いますが、当時は正座がほとんど。それまでは膝を折ったことがなかったので、足がしびれて大変でした。いまだに長時間は苦手です。
 村田先生は、今は健康上の理由で引退されましたが、基礎からみっちり教えてくださいました。よほどのことがない限りいけている途中で中断することはありませんでしたが、出来上がった作品に対してはどこが悪くてどこが良いかを理論的に説明してくださいましたし、たとえ短く切りすぎても、おかしないけ方をしても手を貸さず、失敗しながら覚えさせるというご指導でした。それがかえってよかったような気がします。今でも納得いくまで何度も何度もいけ直しては見ていただいたことが思い出され、それが現在の自分の基礎になっていると思います。

 職場では、上司がいけばなに理解のある方でしたので、休暇を取って研修課程にも参加することができました。以前は株主総会があると、玄関・会議室・応接室等、花代もいとわず好きなだけお花を飾らせてもらえましたが、最近は経費節減の折、残念ながらお花を飾るのは海外のお客様がみえる時くらいになってしまいました。
 今でも印象に残っている上司の言葉があります。
 「仕事は何年か経てば誰でも覚えるしできるようになる。仕事を教えるよりも、ものの考え方を教えることの方が大事。なぜそうなるのか。どうして失敗したのか。どうすべきなのか。」
 これは、お花にも通じることではないでしょうか。ある程度お稽古をするといろいろとできるようになっていきますが、花型等ができた時の意図や根底にある思いや考え方、伝えたいものをきちんと把握し指導する、そんな教授者になれたらと思います。特に様式などの場合は、なぜこの型にしているのか、なぜこの取り合わせなのかということ、あるいは同じ型でも盛花と瓶花ではなぜ角度を変えているのかなども伝えていきたいです。でも、最終的には型を抜け出し、その人の個性でお花をいけられたら素敵ですよね。

「秋田県華道連盟展」出品作品(2012年11月)

チームワークが自慢の秋田支部 小規模花展を自己表現のチャンスに

 秋田支部はまとまりのある支部だと思います。さまざまな行事の際には専門教授者が率先して協力してくれますし、なかなか幹部の手が回らない時には名誉幹部の先生方もバックアップしてくださいます。青年部の活動にも理解を示していただけるので、みんなのびのびと活動させてもらっています。

「秋田支部創立60周年記念 特別講習会」迎え花の前にて(左が今野さん 2016年5月)

 実は、自分がいけた作品を写真に撮るという気持ちがあまりなかったので、今回も写真がほとんどなくて正直なところ困りました。
 大きな花展になるとテーマや飾る場が特定されますが、「みんなの花展」や地元の華道連盟の花展では、自分のいけたいものをいけるようにしています。習い始めたばかりの方も、気軽に出品しやすい「みんなの花展」にはお稽古のつもりで参加してほしいと思います。

「みんなの花展」出品作品(2014年5月)

いけばなと共通点のあるマラソン 地区別皆勤記録、更新中

 職場の後輩に誘われて毎年9月開催の田沢湖マラソンに参加しています。田沢湖は水深423mという日本一深い湖で、金色のたつこ像をご存じの方もいらっしゃると思いますが、とても美しい湖です。地区別教授者研究会に出始めた年から参加し、地区別は今のところ24回連続で皆勤、マラソンは1回休んだので皆勤とはならず昨年が23回目の出場となりました。研修課程V期の考査日とマラソンが重なった年があり、最終的にはお花を選びました。先生のご指導のお陰で研修は修了しましたが、今でも「マラソンも皆勤にしたかったなぁ」と思うことがあります。

田沢湖マラソン前夜祭であこがれの橋尚子さんと(2015年9月 右が今野さん)

 私は「マラソン」と「いけばな」には通じるところがあると思っています。
 マラソンは当日にあわせて体調を整えて走り込んでいくわけですが、練習に時間をかけた時とそうでなかった時とでは、走っている最中はもちろん、 ゴールをした時の満足感や体の疲労度がまったく違います。 昨年は運動不足だったうえに短期間で走り込みをしたので、マラソン当日はよかったのですが、終わってから膝に炎症をおこして水がたまり、歩行困難になってしまいました。 いけばなも日頃の研鑽が必要であるように、やはり何事も普段からの積み重ねが大切なのだとつくづく感じました。
 また、めざす距離は個々に違っても一緒に取り組む仲間がいたのでここまで続けられたのだということも、マラソンといけばなの共通点だと思います。年1度の体カチェックも兼ねて、これからもマラソンに参加し続けていきたいと思います。

【今野 鈴子さんに一問一答】
好きな花:
好きな作家: 中川幸夫『聖なる書』・『ブルース』ほか、北村武資の織物
マイブーム: モーツァルト、うちの猫2匹(癒されます)
自宅で共同生活している猫たち(タロウと華子)

今野 鈴子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、工藤 豊真さん(能代支部)です。支部長としてご活躍の工藤さんとは、県連の勉強会でご一緒され、また研修課程の時にもお世話になったとのこと。いつもテキパキとしてリーダーシップがあり、研修ではみんなのまとめ役。いけばなはもちろん一級家元教授ですが、スキーの腕前も1級のスポーツウーマンだそうです。どうぞご期待ください。


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