みんなのいけばな

File No.99

大川美幸さん 大川美幸さん (静岡県・静岡支部)

いけばなから始まった「出会い」が
人生の出会いをつないでいく

根からのアウトドア派の私が
いつしか夢中になっていた“いけばな”の魅力

海のそばで育ち、テニスやサーフィンなどアウトドアスポーツに夢中だった若い頃、お母さまからの一言でいけばなのお稽古を始められたという大川さん。青年部の良き仲間と出会い、厳しくも愛情豊かな師と出会ううちにいけばなの魅力にひき込まれ、ひたむきに研修課程での勉強に打ち込むようになるストーリーは、まさに青春そのもの。人との出会いに導かれ、キラキラと輝く大川さんの「いけばなじん物語」を伺いました。

明るく大らかな鈴木陽子先生との出会い
研修課程の日々がより彩り豊かに

 鈴木陽子先生との出会いは、「八幡平青年部夏期大学(1991年)」参加に始まります。「お隣の支部同士、これからよろしくね」とご挨拶いただき、以来、静岡県6支部青年部でおこなった合同野外展制作会(1992年)や地区別教授者研究会でもお声をかけていただくようになりました。たびたび雨に降られた野外展では、合羽と長靴姿で「雨にも負けず頑張ろうね」と声をかけ合ったことを思い出します。
 研修課程U期でご一緒させていただいたときは、同じホテルでお部屋が隣同士でした。お互いの部屋を行き来しては復習したり、お茶のお話を伺ったりと、夜遅くまで楽しくお話をさせていただき、また考査日の朝は「今日は頑張ろう!」とハイタッチして研修会館に向かいました。大先輩なのですが、気さくなお人柄に今では“陽子先生”と呼ばせていただいています。

 支部花展やみんなの花展に伺うと、お忙しい中でもきちんと説明してくださる陽子先生。陽子先生がいけられるお花は、私も機会があればいけてみたいと思わせる素敵な作品ばかりで、私にとって憧れの先生です。

海へ山へとスポーツに夢中だった若い頃
花嫁修業のつもりで始めたいけばなに魅せられて

 小原流いけばなを始めたきっかけは、真っ黒になって遊ぶ私を見た母の一言からです。社会人になってお給料をいただくようになると、ヨット・サーフィン・テニスと海山でのアウトドア三昧。母に「お見合いの経歴書に花嫁修業らしいものが何も書けないなんて。せめてお花を習ってよ」とせがまれ、色白にはほど遠い私もさすがにひとつぐらいインドアの習い事をしてみようかと、テニス仲間の女の子が習っている小原流を紹介してもらい、いけばなの門をくぐりました。季節ごとに色とりどりの花をいけることは楽しかったのですが、テニスも楽しい盛り。仕事終わりにお稽古に来て、研究会にも出席するような熱心な生徒さんが多いなか、私はというと、仕事は定時で切り上げラケットを下げて先生のお宅へ。お稽古が終わると花材を花バッグに入れてナイターテニスに向かい、研究会は雨が降った日に出席と、あまり真面目な生徒とはいえませんでした。
 遊びも全力投球でしたが、地区別教授者研究会は三級になってすぐに参加を勧められてから、これまでずっと頑張ってきました。早いものであと5回で30年皆勤です。まだまだ頑張って参加し続けたいと思います。

 最初に師事したのは、故・織田豊啓先生です。当時は静岡支部の支部長をされており、自宅教室をはじめ、高校の部活動・カルチャー教室・出稽古…と、すべての曜日がいけばなに携わるお忙しさでした。あるとき先生から「美味しいお菓子とお抹茶をいただいて色白になりませんか?」と茶道にもお誘いいただきました。織田先生は、落ち着きのない私を心配して誘ってくださったのだと思います。職人技が詰まったきれいな練りきりのお菓子に誘われて、3年ほどお稽古させていただきました。
 お茶のお稽古の日は最後まで残って後片づけをし、余ったお菓子をいただくことも楽しみのひとつでした。お稽古ではつい脱線してお話タイムになることもしばしば。先生の女学生時代のお話もお聞きするなど、その頃のことは今も良い思い出として心に残っています。

織田豊啓社中展(左から4番目が織田先生、一番左が大川さん 2001年11月)

 青年部の野外活動を通して他支部の方々と出会い、そこで初めて皆が研修課程を受けていることを知りました。「研究院教授陣に指導していただける、社中を超えた環境で一緒に勉強しましょう」と誘ってもらったことが嬉しく、興味が湧いて受講を決めたのですが、そのことを織田先生に話すと大変驚かれました。研修がT期・U期・V期とステップアップしていくことも知らず、研究会も4級までまじめに出席していなかった私です。時間内にいけられないのは当たり前、ツバメも真っ青低空飛行。織田先生は、そんな私に必死に技術と心構えを教えてくださり、研修課程へと送り出してくださいました。

 現在は、関邦明先生に師事しています。当時、研修課程がなかなか進まない私を見て織田先生が心配し、「研修のお勉強をしてきなさい」と間を取り持ってくださって、関先生の教室で学ばせていただくことになりました。
 関先生は私の諦めの早い性格をすぐに見抜かれたようで、いけあがったお花に一言「雑な花だなぁ〜」と。…おっしゃる通りだと思います(笑)。
 当時はひたすらお花を挿すだけで何もわかっていませんでした。先生の手直し後にはイキイキとした美しい空間が現れて、いつもお花を抜いて帰るのがもったいないような気持ちになります。写真を撮り、持ち帰った花材でおさらいをしていますが、先生のいけてくださったものと見比べると、同じところに挿しているつもりなのに、振りなのか角度なのか何かが違う。まだまだ修行が足りないのだなと感じます。
 厳しい中にもホッコリとした優しさでご指導いただき、お稽古の合間に挟むおしゃべりをして過ごす楽しいひとときに、皆さんがあまり見る機会のない先生のお姿を間近で拝見できているんだなと思うと、それだけでも嬉しい気持ちになります。

 研修課程修了までの道のりは大変なものでしたが、関先生のご指導のおかげで無事修了し、研修士となりました。研修があった日にはみんなと集って食事して夜遅くまでお話をしたり、空き日には“頑張って参考花をいただいたご褒美”に宝塚歌劇を観劇したり、反対に頑張れなかった後悔を海遊館のジンベイザメに癒してもらったり、「明日は頑張るぞ!」と吉本新喜劇で思いっきり笑って充電したり…。と、ひとつひとつに理由をつけましたが、楽しく研修生活を過ごせたことがとても良い思い出となっています。

マイ・イケバナで感じた想像し創造する喜び
子どもたちにもいけばなの楽しさを伝えていきたい

 青年部活動として、八幡平と翌年(1993年)に霧島で開催された「青年部夏期大学」に参加したことも良い思い出です。他支部の方と寝起きを共にして語り合い、同年代の方とも知り合うことができました。霧島では台風に見舞われ夜に停電したため、最終日の予定を切り上げて空港に急ぎ、キャンセルが相次ぐ中で飛行機の手配をし直して、皆で東京まで帰ってくるなど大変な研修でしたが、おかげで楽しい時間が過ごせました。その時の仲間は、今でも大切な友だちです。

青年部夏期大学in霧島(中列左から5番目が大川さん 1993年8月)

 関東信越地区青年部では、第1回・2回野外展の実行委員を務めさせていただきました。無事に成功できるよう、企画し概要を考え要項を作るなど打ち合わせを重ねました。研修士同士で思いも共有でき、貴重な経験、勉強をさせていただいたと思っています。

「関東・信越地区青年部野外展」にて(前列一番左が大川さん 2011年10月)

 その時に友人が、マイ・イケバナや造形展をはじめ、青年部活動を積極的にされている先生方(保田先生・伊東先生・福士先生・光永先生・廣野先生)を紹介してくれました。先生方が楽しそうにお話ししてくださる姿に刺激を受けて「自分でも作ってみたい」と思うようになり、マイ・イケバナに参加しました。しかし、見ると作るのでは大違い。最初は、大きなものを作ればいいかというくらいで、どう構想や構成をしていけばいいのかわからないまま思いつきで作ってしまいました。関先生から「捨てる物から想像して」とアドバイスを受けて、素材を見つけた時に「これだ!」と直感。想像してワクワクし、作品を造りながら「これが“創造する”ということなんだ」と感じました。造形というとつい難しく考えてしまいがちですが、ボーっとしている時にこそ“ピカッ”とひらめくもので、そういう時はメモを取るようにしています(冷静になるとボツになるものが多いのですが…)。

 評価していただけるような作品を造るには作業に大変なパワーが必要ですが、その分、心は燃えます。「2004マイ・イケバナ」で受賞して以来、常に想いをのせて作品を作るようになりました。第三者の視点で作品の感想を聞くと、気持ちがドキドキとわき立つことも知りました。

「2004マイ・イケバナ」S氏賞・M氏賞受賞作品

 青年部の頃から支部行事にも参加させていただき、研究会では会場のお手伝いをするなどして、平成20年には幹部に任命されました。お昼になると皆で机を合わせてにぎやかに食事をするなど、静岡支部はいつも和気あいあいとしています。現在は研修係で、研究会の花材取り合わせを担当しています。天候状態や研究会のタイミングを考慮し、花屋さんと打ち合わせしながら取り合わせを考えるのは大変ですが、褒めていただいたときはうれしく、その反対の場合は、次は頑張ろうと工夫し、いつも勉強させていただいております。
 新年初会では、研修係が考えたコサージュやお雛様を会員の皆さんに作っていただくなど、楽しいひとときを過ごしていただけるアイデアを毎年ひねり出しています。

越後妻有アートトリレンナーレにて(中央が山田支部長、左が山本副支部長、右が大川さん 2009年8月)
「静岡県華道展」出品作(2015年10月)

 また静岡県華道連盟では理事を務めています。私のような若輩者には、キャリアを積まれた先生方の懸命な華道活動はとても真似できることではありませんが、ご指導をいただきながらいけばな文化を伝えていきたいと思っています。

 現在の教授活動としては、常葉大学附属常葉中学校・高等学校で非常勤講師として勤め、華道の指導をおこなっています。中学校では「伝統文化講座」の授業を、高等学校では部活動を担当しています。実は私は同校の卒業生で、在学中は演劇部に所属していました。当時お世話になった顧問の先生にお会いすることができ、「君が先生になったのですね」と笑いながらお話をしました(笑)。また、生徒のお母様が小原流の経験者で兄弟弟子だったりと、さまざまな出会いがあります。

常葉高等学校部活動にて(一番右が顧問の竹内則子先生、一番左が村松副支部長、左から2番目が大川さん 2017年7月)

 生徒たちが笑顔で教室に来て、笑い声のたえない中で準備を始め、いけている時は真剣に、終わった後は生徒とのおしゃべりに花が咲く、そんな時間が楽しいです。卒業する生徒から「いけばなが楽しかったです」と言ってもらえた時は、そのひとことが嬉しくて目頭が熱くなりました。

いけばな親子教室高松地区幹部同期と
 新年初会にて
 (右から2番目が大川さん 2014年1月)

 いけばな親子教室では、丸子地区・高松地区の二か所に携わっています。幹部の同期4人で立ち上げてから7年目になる高松地区は、丸子地区のお手伝いをした時に、支部長の山田富世先生、参与の故・小林敏子先生から「指導するとわかることがたくさんあるわよ」と背中を押していただいたのが開設のきっかけです。先輩方から道具をいただき、町内の公民館を借りて教室をスタート。教室では出席簿に丸を付けてくれる子、花材を黒板に楽しそうに書いてくれる子などさまざまです。器を前にして真剣にどこに花を挿すのがよいのかと考える子に「どこに挿す?」と聞くと「ここ!」と、迷いがない様子に惚れぼれします。みんな「お花が好き」と笑顔で話してくれ、ご家族からは「家に帰ると『お母さんに教えてあげる』と楽しそうにいけています」とお聞きするとうれしくなります。

 子ども教室から自宅の稽古に移る子もいます。高校生になり、准教授まで許状を取得した生徒もいます。現在は受験でお休みしていますが、このまま続けてもらいたいと願っています。
  子どもたちの身長が伸びるように、いけばなを通して心も成長していく姿を見守ることができ、とてもうれしく思います。また、教室が子どもたちにとっても楽しい場所になったことも良かったと思います。これからもたくさんの子どもたちがいけばなに興味を持ってくれることを願っています。

自然の美しさを愛し
優しい猫たちに癒されて

 子どもの頃、親の転勤で静岡に引っ越し、生まれてはじめて家から海がすぐ見えるところに住むことになりました。空と海を見るのが大好きになり、海で遊ぶのは自然なことでした。大人がサーフィンやヨットを楽しむのを見て育ち、私は特に動力のあるものに興味を持ったので船舶免許を取りました。マリーナショップの会員になってジェットスキーを4人で1台所有し、週末ごとに乗って、肌はいつも真っ黒に焼けていました。船で戸田、土肥までよく行きましたが、駿河湾の真ん中まで行くと海と空が一面に広がり、地球は丸いと感じることができます。夜には波が凪いだ真っ暗な海に月が映り、怖いくらいにきれいでした。流星群も美しく、夜空を独り占めできるようでうれしくなります。
 今でも空や海を眺めるのが好きなので、これからはもう少し大きな望遠鏡を買い、星空をゆっくり観察したいと思っています。

 3年前に卵巣のう腫破裂を起こし、手術しました。子宮には筋腫が残っており、女性ホルモンの治療を続けていますが、検査でよい進捗がなければ落ち込む日もありました。
 そんな時に猫カフェの前を通り、何度か通うようになったのですが、目の前に来て「どうしたの?」というように小首をかしげ、ゴロゴロ喉を鳴らしながらなでさせてくれる猫や、のっそのっそと来て「来たな」としっぽをピンと立て、ゴロンと背中を見せて私の足に頭を乗せてくる猫など、温かくて自由な猫たちに幸福を感じ、萌え萌えと心癒されました。タブレットを使えるようになってからは、猫ブログがどれも可愛いので、すっかりはまってしまい1日中見ています。

萌え萌えしております
「静岡中部いけばな展」出品作(2017年1月)

 織田先生のお茶を一服いただいている時に、言っていただいた言葉で「華道・茶道と、道がつくもの古き良き時代から伝わってきた美しい伝統。あせらなくていい。ゆっくりでいい。一歩ずつ道を歩けばいい」というものがあります。とてもありがたい言葉で、道に携われることに幸せを感じながら、今もゆっくりと前へ進んでいます。  
  すべてはいけばなから始まった出会いであり、前に進むために背中を押してくださるのは、いけばなを通して出会った方々です。そう思うと「出会い」に感謝の気持ちがわいてきますし、これからも出会いを大切にしたいと思います。そして、これからも新しい出会いが待っていると思うと、ますます「いけばな」って楽しいなと思えます。

【大川 美幸さんに一問一答】
好きな花: カラー、胡蝶蘭、ストレリチア
好きな作家: 田中一村
好きな作品: 奄美を描いたものをはじめとした全般。作品集を見ていると、海と空の景色に奄美を旅してみたくなります。
マイブーム: 延命酢の酢昆布。都こんぶもオススメですが、静岡で作られているみかんを発酵させた醸造酢で作った昆布です。メディアで取り上げられてからは品薄です。見つけた時は大量に購入します。

大川美幸さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、石塚晶子さん(札幌支部)です。青年部夏期大学で同じ班になり出会った最初のお友達。テキパキと行動するしっかり者で、明るくてカラッとしたお人柄、同い年と知り親近感を感じたそうです。年賀状のやりとりやマイ・イケバナでお会いし、刺激を受けているとのこと。どうぞご期待ください。

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